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農薬環境科学研究会 代表:村野 宏達 1977年7月、東京都八王子市の大学セミナーハウスにおいて、日本農薬学会と文部省科学研究費特別研究古坂班の共催で「土壌環境中における合成薬剤の挙動に関する勉強会」が開催されました。そのことに端を発して、農薬環境科学研究会は、その共催シンポジウムが6回開催された翌年の1983年に日本農薬学会の学術小集会として発足し、第1回を同年7月に東京農業大学厚木農場で開催しました。以来、本研究会は、2020年に新型コロナウィルスの蔓延により中止となった以外、毎年開催しています。また、30週年を記念して2012年に『DVD 版30 年のあゆみ』を発刊するとともに、日本農薬学会の40周年を機に学会ホームページにおいて講演要旨を公開し、現在は2019年(第37回)まで検索・閲覧できるようになっています。 農薬と環境を考えると、レーチェル・カーソン女史の「沈黙の春」(1962)が思い浮かびます。当時の農薬として利用されていた物質の多くは、現在残留性有機汚染物質(POPs)に指定され、それらの使用や流通が国際的に禁止または自粛されています。また、現在使用されている化学農薬、中でも有機合成農薬については、国内外で作物および環境中残留や生態影響等に関する法令等が整備されています。さらに有効成分や製剤の飛躍的な技術革新があり、環境の質の向上に貢献してきました。しかし、そのように厳しくリスク管理された現在でも、化学農薬については、その負の側面が世間で根強く取り上げられています。そのため、当研究会でも化学農薬を主たるテーマとしてこれまで議論してまいりました。 環境保全に係る国際的取り組みについては、人間環境宣言(1972)、リオ宣言(1992)、生物多様性条約(1992)、地球の限界(Planetary Boundary、2009)、持続的開発目標(SDGs、2015)等、近年益々高まっています。そのような中、2021年5月に農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」において「化学農薬使用量(リスク換算)50%低減」が2050年までの重要業績評価指標(KPI)として掲げられました。その対策として、昆虫や微生物を中心とした天敵農薬、ゲノム編集を含むバイテク農作物、RNAi農薬等のバイオ農薬、バイオスティミュラント等、植物保護や農作物の健全育成等に関連した技術開発(イノベーション)が進行しています。 本研究会においても、農薬と環境のかかわりをさまざま視点で俯瞰的に捉えることが肝要でしょう。そのためにも産学官や専門性の違いにかかわらず、様々なステークホルダーが一堂に会して、幅広い視点の情報を共有し、分け隔てなく討論する場を提供したいと考えています。実はこの方針は、この研究会発足当初から連綿と受け継がれていることです。研究会では、肩書を外すためのノーネクタイでの情報交換を含めて、わずか2日間であっても同じ釜の飯を食う仲間としての環境づくりを大切にしています。 研究会開催案内:第42回(令和7年12月8日(月)~9日(火))千葉県千葉市 過去の研究会:第41回(令和6年11月11日(月)~12日(火))徳島県徳島市 第40回(令和5年9月14日(木)~15日(金))愛媛県松山市 第35回(第37回農薬製剤・施用法との合同シンポジウム) 第34回(平成28年11月10日(木)~11日(金)) 第33回(平成27年10月15日(木)~16日(金)) 第32回(平成26年11月20日(木)~21日(金)) 第31回(平成25年11月21日(木)~22日(金)) 第30回(平成24年10月18日(木)~19日(金)) 第29回(平成23年10月27日(木)~28日(金)) 第28回(平成22年10月28日(木)~29日(金)) 第27回(平成21年10月29日(木)~30日(金)) 第26回(平成20年10月30日(木)~31日(金)) 第25回(平成19年10月25日(木)~26日(金)) 第23回(平成17年10月27日(木)~28日(金)) 第22回(平成16年10月28日(木)~29日(金)) 第21回(平成15年10月30日(木)~31日(金)) 第20回(平成14年11月7日(木)~9日(金)) 第19回(平成13年11月15日(木)~16日(金)) 第18回(平成12年10月5日(木)~6日(金)) :テーマ「農薬の環境動態及び生態影響に係わるガイドライン」 第16回:テーマ「ゴルフ場の農薬問題」 第15回:テーマ「土・微生物と農薬」 第10回シンポジウム |
